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派遣として働き始めて数か月、契約は来期まで残っているのに、眠れない・出勤前に体が動かないといった不調が続き、派遣会社に相談しても「契約期間内だから満了まで働いてほしい」と言われて動けなくなる。こうした場面で問題になるのは「契約期間の途中でも辞められるのか」と「そのために診断書はどう使えるのか」の二つです。
結論から言えば、期間の定めのある雇用(有期雇用)でも、体調不良が民法628条でいう「やむを得ない事由」にあたれば、契約の途中で解除できます。診断書は医学的な良し悪しを決める書類ではなく、その「やむを得ない事由」が確かに存在することを客観的に示す手続き上の資料として効きます。以下では、法律上の根拠、診断書が関わる場面、辞められるかどうかの判断の順序、そして休んでいる間のお金(傷病手当金)との関係を、手続きの側面だけに絞って整理します。医療上の判断や治療の要否には触れません。
派遣の契約期間内でも「やむを得ない事由」があれば解除できる

派遣社員の多くは、派遣会社(雇用主)と期間を定めた雇用契約を結んでいます。この有期雇用について、民法628条は、当事者にやむを得ない事由があるときは直ちに契約を解除できると定めています。体調不良で働き続けることが難しい状態は、この「やむを得ない事由」に含まれ得るものとして扱われます。
ただし、どの程度の不調なら該当するかは条文だけでは決まらず、個別の事情を踏まえた判断になります。過去にこの「やむを得ない事由」の範囲を示した裁判例があるため、実際の相談では判断の目安として参照されます。この記事では、その立証に診断書がどう関わるかという手続きの部分だけを扱います。
期間の定めがない場合との違い
もし派遣ではなく期間の定めのない雇用であれば、理由を問わず、解約の申入れから2週間の経過で雇用が終了します(民法627条1項)。これに対して有期雇用は、原則として期間中は拘束される代わりに、途中で辞めるには「やむを得ない事由」という追加の説明が求められる、という違いがあります。派遣で契約期間が残っている人にとって、この一段だけ高いハードルを越える材料が診断書だと考えると分かりやすくなります。
診断書は「やむを得ない事由」の立証でどう効くか
診断書の役割は、医師が病名や就労に関する所見を記した文書によって、本人の申告だけでは主観的に見えてしまう体調不良を、第三者が確認した客観的な事実に変えることにあります。派遣会社や派遣先に対して「体調が悪い」と口頭で伝えるのと、医師の診断書を添えて「就労困難の所見がある」と示すのとでは、やむを得ない事由の説明力が変わります。
注意したいのは、診断書があれば必ず途中退職が認められる、という性質のものではない点です。診断書はあくまで事由を裏づける資料の一つであり、最終的な扱いは契約内容や個別事情を踏まえて判断されます。逆に、診断書がなくても事由が認められる場合もあります。ここでは「不調を証拠として残し、説明の材料をそろえる」ための実務的な道具として位置づけます。
診断書が関わる主な手続きと役割
| 場面 | 診断書の手続き上の役割 |
|---|---|
| 途中退職の申し出 | 民法628条の「やむを得ない事由」を裏づける客観資料として添える |
| 欠勤・休職の申請 | 就労が難しい状態を会社に示し、無断欠勤扱いを避ける材料にする |
| 傷病手当金の申請 | 療養のため労務に服することができないことを証明する欄で医師が記入する |
| 離職後の給付手続き | 離職理由の説明に用いられることがある(扱いは窓口の判断による) |
診断書は発行に費用がかかり、記載内容や様式は医療機関ごとに異なります。効果や記載の範囲には個人差があるため、何のために使うか(退職の申し出用か、傷病手当金用か)を受診時に伝えておくと、必要な所見が入った一通を用意しやすくなります。
契約期間内に辞められるかの判断フロー

派遣で契約期間が残っている場合、次の順序で自分の状況を確認すると、辞められる見込みと必要な準備が整理できます。
- 今の契約が有期か、期間の定めのないものか(多くの派遣は有期)。
- 体調不良が就労を続けにくい状態か。医師の受診歴や診断書があるか。
- やむを得ない事由として説明できそうか。説明が難しければ、次の更新をしない形(契約期間満了での退職)に切り替える選択もある。
- 派遣会社に自分で伝えられる状態か。連絡自体が精神的に難しい、退職を強く引き止められている場合は、退職代行など第三者を通す手段を検討する。
この流れで「有期・就労困難・診断書あり」がそろうほど、契約期間内の途中退職を申し出る材料は整います。反対に事由の説明が弱い段階では、期間満了まで待つか、有給休暇(労働基準法39条にもとづき労働者が取得時季を指定できる休暇)を使って出社を減らしながら満了を待つ組み立ても現実的です。
休んでいる間のお金:傷病手当金との併せ方
体調不良で働けない期間は、健康保険の傷病手当金(業務外の病気やけがで仕事を休んだときの生活保障の給付)を受けられる場合があります。派遣社員でも、派遣会社の健康保険に加入していれば対象になり得ます。全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金には、業務外の傷病で療養のため働けないこと、連続して休んだ期間があること、その期間について給与の支払いがないことなどの要件があります。
この給付では、療養のため労務に服することができない事実を医師が証明する欄があるため、退職の申し出に使う診断書とは別に、傷病手当金の申請書に医師の記入が要ります。退職を急ぐ前に、在職中に受診して不調の記録を残しておくと、後からの申請がしやすくなります。給付の可否や金額は加入状況によって変わるため、詳しい要件は加入先の健康保険窓口で確認してください。
派遣で辞めるときの連絡先と、退職代行を使う場合の費用

派遣で辞意を伝える相手は、雇用主である派遣会社です。派遣先の職場ではなく、まず派遣会社の担当へ連絡するのが手続きの起点になります。ここで強く引き止められたり、体調的に連絡そのものが負担だったりする場合に、退職代行という選択が出てきます。
退職代行の料金は、派遣社員向けでも民間・労働組合・弁護士の運営主体によって幅があります。例として、退職代行モームリでは正社員・契約・派遣が22,000円(税込)で、あと払いを使う場合は手数料3,000円が加わるため、合計は25,000円という内訳になります(2026年9月時点・公式サイト確認)。単純な退職の連絡だけか、有給の消化まで会社に伝えたいかで、選ぶべき運営主体の型が変わります。会社との交渉(有給の消化や未払い分の請求など)まで任せたい場合は、労働組合型か弁護士型が対象になります。
どの型がどこまで対応できるか、有給の交渉ができるのはどの運営主体かは、料金と併せて退職代行おすすめ8社比較|有給交渉できるのはどの型かで確認できます。
よくある質問
診断書がないと契約期間内に辞められませんか。
診断書は必須ではありません。やむを得ない事由(民法628条)が認められれば、診断書がなくても途中退職はあり得ます。ただし体調不良を客観的に示す材料として、あると説明がしやすくなります。
診断書は派遣会社と派遣先の両方に出す必要がありますか。
提出先は雇用主である派遣会社です。派遣先の職場に直接出す必要は基本的にありません。傷病手当金の申請では、健康保険の窓口に別の申請書として医師の証明を提出します。
診断書に退職理由まで書いてもらう必要がありますか。
退職の可否を判断する書類ではないため、退職を勧める記載は求めません。就労が難しい状態や療養の必要といった所見があれば、やむを得ない事由の裏づけとして機能します。
退職代行に頼んでも診断書は自分で用意するのですか。
診断書の発行は医療機関で本人が受け取る手続きのため、退職代行が代わりに取得することはできません。用意した診断書を会社へ示す連絡や、退職の意思表示を代行が担う形になります。
体調不良を理由にすると、離職票の離職理由に不利になりませんか。
離職理由の記載は退職の経緯によって変わり、窓口の判断も関わります。体調不良の事実は診断書や受診記録で説明できるため、記録を残しておくことが後の手続きで役立ちます。
契約期間の途中で辞めると損害賠償を請求されますか。
やむを得ない事由が認められる場合、原則として一方的な責任だけを問われるものではありません。ただし引き継ぎを放棄したなどの事情があれば争点になり得るため、断定はできません。
参考・出典
- 民法627条・628条(e-Gov法令検索で条文を確認)
- 労働基準法39条(年次有給休暇の時季指定・e-Gov法令検索)
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)傷病手当金の要件
- 退職代行モームリ 公式サイト https://momuri.com/(2026年9月時点で確認)

