解雇にかかる会社側の費用|辞めさせたい側の事情

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「もう辞めたい」と伝えたのに、会社は解雇にはせず「もう少し考えてほしい」「辞めるなら自分で退職届を出して」と引き止めてくる。あるいは、明らかに戦力外扱いされているのに、なぜか会社から「クビ」とは言われない。こうした場面には共通の理由があります。会社にとって「解雇」は、想像以上にお金と手間のかかる選択肢だからです。この記事は、退職手続きそのものの手順ではなく、辞めさせたい側・引き止めたい側の会社が実際に何を負担するのかを費用の面から整理します。判断の基準は一つで、会社が負うコストのどこが大きいかを知れば、なぜ会社が「自己都合で辞めてほしい」と誘導するのか、どこに交渉の余地があるのかが見えてくるということです。

なぜ会社は「解雇」を避けて辞めさせたがるのか

労働者側から見ると「クビにされる」ことは不利益ですが、会社側から見ると解雇は簡単なカードではありません。理由は大きく分けて三つあります。第一に、法律で定められた手当や手続きに直接お金がかかること。第二に、解雇が「会社都合」として記録に残ると、国からの助成金など間接的な利益を失うこと。第三に、解雇が無効だと争われたときに賠償や解決金という後払いのコストが発生するリスクがあることです。

この三つを避けるために、会社はしばしば「解雇」ではなく「本人が自分の意思で辞めた(自己都合退職)」という形を望みます。退職を促すこと自体は退職勧奨(たいしょくかんしょう=辞めるよう働きかけること)として直ちに違法にはなりませんが、その裏には「解雇にすると自社が損をする」という事情が隠れています。以下で費用ごとに具体的に見ていきます。

会社が解雇で負う主なコスト 内容 根拠・区分
解雇予告手当 予告なしで解雇するなら平均賃金の30日分以上 労働基準法20条
助成金の不支給・停止 会社都合の解雇があると多くの雇用関係助成金が受けられなくなる 雇用関係助成金共通要領
不当解雇の賠償・解決金 解雇が無効と判断されると、さかのぼった賃金や解決金の支払い 解雇権濫用の考え方
退職強要による賠償 執拗な退職強要はパワハラとして損害賠償の対象になりうる パワーハラスメント指針
採用・教育コスト 抜けた人員を補う採用費・研修費 間接コスト

解雇予告手当という最初のコスト(労働基準法20条)

会社が従業員を解雇しようとするときは、少なくとも30日前に予告するか、予告しない分について平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法20条)。予告が30日に足りない場合は、足りない日数分を手当として支払う必要があります。つまり「明日から来なくていい」という即日解雇をするなら、その従業員へまとまった現金を即座に用意しなければならない、ということです。

解雇予告手当の計算例(内訳)

平均賃金は、原則として直前3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の暦日数(実日数ではなくカレンダー上の日数)で割って算出します。具体的な賃金は人によって異なるため、ここでは仮の数字で内訳を示します。

  • 直近3か月の賃金総額(仮): 90万円
  • 同期間の暦日数(仮): 92日
  • 平均賃金 = 90万円 ÷ 92日 ≒ 約9,783円/日
  • 予告なしで即日解雇する場合の手当 = 約9,783円 × 30日 ≒ 約29万3千円以上

これはあくまで賃金を仮定した試算ですが、会社は解雇一件ごとにこの水準の現金を追加で負担する計算になります。10日前に予告した場合は不足分の20日分、というように予告日数に応じて減りますが、いずれにせよ「本人が自己都合で辞めてくれれば、この支払いはゼロで済む」という点が、会社が退職を促す一つの動機になっています。

会社都合離職が助成金に響く(辞めさせたい側の事情)

直接の現金以上に会社が気にするのが、国の助成金です。厚生労働省の雇用関係助成金共通要領では、事業主の都合による解雇(会社都合離職)があると、一定期間、多くの雇用関係助成金を受給できなくなるという趣旨の要件が定められています。人材採用や育成、雇用維持などで助成金を活用している会社ほど、この不支給は大きな痛手になります。

ここで効いてくるのが、離職票(退職後にハローワーク手続きで使う書類)に記載される離職理由です。同じ「退職」でも、会社都合(解雇・退職勧奨など)か自己都合かで、会社が失う助成金の有無が変わります。だからこそ会社は「自分から辞めた」という形にこだわり、退職届の提出を強く促すことがあります。助成金の具体的な不支給対象期間や要件は制度改定が多いため、詳細は最新の要領で確認が必要です[[要確認: 雇用関係助成金共通要領で解雇により不支給となる具体的な対象期間]]。

一方で、離職理由は本来の事実に基づいて記載されるべきもので、退職者にとっては会社都合のほうが失業給付を早く受けられるなど有利になる場面があります(離職票の扱いは別記事で詳しく触れます)。会社の「自己都合にしたい」事情と、退職者の「事実どおりにしたい」立場がぶつかる部分であり、ここが交渉の一つの焦点になります。

不当解雇・退職強要で膨らむ賠償リスク(パワハラ指針)

会社が最も避けたいのは、後から解雇が争われることです。解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合、その解雇は無効と判断されることがあります[[要確認: 解雇権濫用法理の根拠条文(労働契約法)]]。無効とされれば、会社は争っていた期間の賃金をさかのぼって支払ったり、退職を前提とした解決金を支払ったりする可能性があり、金額は解雇予告手当より大きく膨らみがちです。

また、解雇の代わりに「自分から辞めるよう」執拗に迫るやり方にもリスクがあります。厚生労働省のパワーハラスメント関係の指針では、職場での優越的な関係を背景とした言動で就業環境を害する行為が問題とされており、退職を強要するような過度な働きかけはパワハラに該当しうるとされています。度が過ぎれば会社が損害賠償を求められる立場になり得ます。退職勧奨(あくまで打診・お願い)と退職強要(拒否しても執拗に迫る)は法的な扱いが異なり、後者に踏み込むと会社側のコストが跳ね上がるという構造です。

この事情を交渉材料にどう使うか(判断フロー)

会社側のコスト構造がわかると、会社の出方から「今どのコストを避けようとしているのか」を読み取れます。条件ごとに整理します。

会社の出方から事情を読む

  • 「自分で退職届を出して」と促してくる → 会社都合離職を避けて助成金と予告手当を守りたい状態。離職理由は事実に基づくべきもので、安易に自己都合と決めつけない姿勢が交渉の起点になります。
  • 強く引き止める・辞めさせない → 代替人員の採用・教育コストを避けたい状態。ただし期間の定めのない雇用は退職を申し入れてから2週間で終了し(民法627条1項)、引き止めに応じる法的義務はありません。有期雇用でも、やむを得ない事由があれば途中解約できます(民法628条)。
  • 損害賠償をちらつかせる → 引き止めや自己都合誘導のための牽制であることが多く、実際に賠償を認めさせるハードルは高いのが通常です。現実に請求リスクがある場合は、弁護士が対応できる退職代行の出番になります。

ここで退職代行(本人に代わって退職の意思を会社へ伝えるサービス)を使う場合、運営主体によってできることが変わります。会社との交渉が必要なら労働組合が運営する労組型、未払い賃金の請求や損害賠償への対応まで見据えるなら弁護士型が向いています。たとえば弁護士型の弁護士法人みやびは着手金27,500円(会社員・アルバイト・契約社員の場合)に成功報酬(回収額の20%+税)を加える料金体系で、有給・残業代・退職金の請求や損害賠償への対応まで扱います(2026年9月時点・公式サイト確認)。どの型が自分の状況に合うかは、有給や交渉の可否を軸に比較した退職代行おすすめ8社比較|有給交渉できるのはどの型かで確認してください。

よくある質問

会社が解雇を渋るのは、私を評価しているからですか

必ずしもそうとは限りません。解雇予告手当の支払いや、会社都合離職による助成金の不支給、不当解雇として争われるリスクなど、会社側が負うコストを避けたいという事情が背景にあることが多いです。引き止めは好意とコスト回避の両面から起きます。

「自己都合で辞めてほしい」と言われたら従うべきですか

離職理由は本来の事実に基づいて記載されるべきものです。会社都合か自己都合かで失業給付の受け方が変わる場面があるため、実態と違う自己都合をその場で受け入れる必要はありません。判断に迷う場合は離職票の扱いを確認したうえで対応するのが安全です。

退職を強く迫られるのはパワハラになりますか

退職を打診する退職勧奨自体は直ちに違法ではありませんが、拒否しても執拗に迫る、人格を否定するといった度を越えた働きかけは、パワーハラスメント指針の考え方に照らして問題となり得ます。会社側もこの点をリスクとして意識しています。

解雇予告手当は必ずもらえますか

予告なしで解雇された場合、労働基準法20条により平均賃金の30日分以上の手当が原則として支払われます。ただし試用期間中の一定条件など例外もあるため、自分のケースが該当するかは個別の確認が必要です。金額は平均賃金によって変わります。

会社のコストを知ると退職交渉で有利になりますか

会社が何を避けたいのかがわかると、引き止めや自己都合誘導の意図を読み取りやすくなります。ただし賠償請求のちらつかせなど法的な論点が絡む場面では、弁護士や労働組合が関与する退職代行を使うほうが確実です。個人で押し切ろうとせず、対応できる主体を選ぶことが結果的に近道になります。

引き止めを断り続けても辞められますか

期間の定めのない雇用であれば、退職の申し入れから2週間で雇用は終了します(民法627条1項)。会社の同意は退職の成立条件ではないため、引き止めが続いても法律上は辞められます。有給休暇が残っていれば、その消化と組み合わせて出社しないまま退職日を迎える方法もあります。

参考・出典

  • 労働基準法(第20条 解雇の予告、第39条 年次有給休暇): e-Gov法令検索
  • 民法(第627条 期間の定めのない雇用の解約、第628条 やむを得ない事由による解除): e-Gov法令検索
  • 雇用関係助成金共通要領: 厚生労働省
  • 職場におけるパワーハラスメント関係指針: 厚生労働省
  • 弁護士法人みやび 公式サイト: https://taishoku-service.com/
  • 退職代行モームリ 公式サイト: https://momuri.com/
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