試用期間14日以内の解雇|予告手当が出ない条件

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入社して10日ほど、まだ試用期間(本採用を判断するためのお試し期間)のうちに、上司から「うちには合わないようだから」と退職を切り出された。しかも「試用期間中だから解雇予告手当は出ない」と言われた。こうした通告を受けると、それが本当に正しいのか、泣き寝入りするしかないのか、判断がつかないまま会社に押し切られてしまいがちです。

結論から言うと、判断の軸は2つに分かれます。1つは「解雇予告手当(30日前の予告に代わるお金)が出るかどうか」で、これは働いた日数が14日を超えているかで機械的に決まります。もう1つは「その解雇そのものが有効かどうか」で、これは日数とは別に、合理的な理由があるかで判断されます。会社が「14日以内」に動こうとするのは前者の負担を避けるためですが、後者の問題は14日以内でも消えません。この記事では、その線引きを条文にそって整理します。

なぜ会社は「14日以内」を意識して動くのか

通常、会社が労働者を解雇するときは、労働基準法20条により、少なくとも30日前に予告するか、予告をしない場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければなりません。突然職を失う労働者の生活を守るためのルールです。

ところが労働基準法21条は、この予告のルールを一部の働き方には適用しないと定めています。その1つが「試の使用期間中の者」、つまり試用期間中の労働者です。ただし例外には続きがあり、試用期間中の人でも「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」は、通常どおり解雇予告のルールが適用されます。

言い換えると、試用開始から14日以内で解雇される場合に限って、会社は解雇予告手当を払わなくてよいことになります。1日でも15日目に入れば、30日前の予告か30日分の手当が必要になります。この差が会社にとっては数十万円規模のコストになるため、辞めさせる方針が固まっている会社ほど、14日という区切りを意識して早く動こうとするわけです。

解雇予告手当が出る場合と出ない場合

予告手当の要否は、次のように働いた日数だけで切り替わります。

試用開始からの状況 解雇予告手当 根拠
14日以内(引き続き14日を超えていない) 支払い義務なし(適用除外) 労働基準法21条4号
15日目以降(14日を超えて引き続き使用) 30日前予告、または30日分以上の平均賃金が必要 労働基準法20条・21条

14日はどう数えるか

ここでの14日は、試用開始日(入社日)から途切れず働いた日数を、土日を含めた暦日(カレンダー上の日数)で数えます。勤務日だけをカウントするのではなく、在籍が続いていれば休みの日も日数に含みます。したがって、入社日を1日目として数え、15日目に入った時点で予告手当の対象になると考えるのが基本です。自分がどちら側かは、契約書に書かれた入社日と解雇を告げられた日を照らし合わせれば確認できます。

解雇予告手当の計算例

予告手当は「30日分以上の平均賃金」です。平均賃金は原則として直近3か月の賃金総額をもとに算定します。仮の数字で示すと、算定した平均賃金が1日あたり9,000円だった場合、30日分の予告手当は9,000円×30日で27万円になります。実際の金額は賃金額や算定方法によって変わるため、ご自身の賃金明細で確認してください。ここでは金額の桁感をつかむための例として挙げています。

予告手当が出なくても、解雇が有効とは限らない

ここが最も誤解されやすい点です。「14日以内だから予告手当は不要」というのは、あくまで手当を払うかどうかの話であって、解雇してよいかどうかの話ではありません。この2つは別の条文で判断されます。

解雇の有効性を判断するのは労働契約法16条です。この条文は、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として無効になると定めています(解雇権濫用法理)。試用期間中は、本採用後よりも会社に広めの解約の余地が認められているとされますが、それでも無制限ではありません。「なんとなく合わない」「思っていた印象と違う」といった主観的な理由だけで、合理的な説明がないまま解雇するのは、試用期間中であっても濫用と判断される余地があります。

つまり、14日以内の解雇であっても、理由に合理性がなければ解雇そのものを争える可能性が残ります。会社側が「試用期間だから自由に辞めさせられる」と説明してきても、それをうのみにする必要はありません。

14日以内の解雇でも確認しておきたいお金と書類

予告手当が出ないケースでも、受け取れるお金や請求できる書類はあります。次の点は必ず確認してください。

  • 働いた日数分の賃金: 実際に勤務した分の給与は当然に受け取れます。日割りの計算に誤りがないか、賃金明細で確かめます。未払いがあれば請求できます。
  • 解雇の理由を記した書面: 会社に対して、なぜ解雇されたのかを書面で示すよう求めることができます。後で解雇の当否を検討するときの重要な材料になります。
  • 有給休暇: 年次有給休暇は、入社から6か月間の継続勤務と全労働日の8割以上の出勤で初めて付与されます(労働基準法39条)。試用期間の序盤ではまだ発生していないのが通常のため、消化して穴埋めするのは難しい点に注意してください。
  • 離職票: 失業給付の手続きに必要です。離職理由の書かれ方で受給のタイミングが変わることがあるため、届いたら記載内容を確認します。

解雇に納得できない・お金を取り戻したいときの相談先

「予告手当が出ないと言われたが、実は15日目以降だった」「合理的な理由の説明がないまま辞めさせられた」「未払い賃金が残っている」といった場合は、自分だけで会社と交渉するより、第三者に間に入ってもらうほうが進みやすいことがあります。相談先は大きく分けて、団体交渉ができる労働組合と、法律事務として交渉・請求ができる弁護士です。損害賠償や解雇の無効を本格的に争う可能性があるなら、弁護士に相談するのが現実的です。

退職代行サービスは本来「自分から辞める」ための仕組みですが、運営主体(民間企業・労働組合・弁護士)によって、有給や未払い分の交渉までできるかどうかが変わります。解雇されそうな状況で先に自分から辞めたい場合や、辞めたうえで未払い分を取り戻したい場合にも関わってくるため、対応範囲の違いを押さえておくと選びやすくなります。運営主体ごとにできることを整理した退職代行の比較記事もあわせて確認してください。なお、試用期間中に自分から辞める場合の手続きは別の記事で扱っています。

よくある質問

試用期間14日以内なら、会社は自由に解雇できますか

いいえ。14日以内であれば解雇予告手当の支払い義務がなくなるだけで、解雇してよいかどうかは別問題です。労働契約法16条により、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当でない解雇は、試用期間中でも無効になり得ます。

14日は何から数えるのですか

試用開始日(入社日)から途切れず働いた日数を、土日を含む暦日で数えます。勤務日だけを数えるのではありません。入社日を1日目とし、15日目に入った時点で解雇予告のルールが適用されると考えるのが基本です。

14日以内に解雇されたら給与ももらえないのですか

実際に働いた日数分の賃金は必ず受け取れます。もらえなくなるのは「30日分の解雇予告手当」であって、労働の対価である給与とは別です。未払いがある場合は請求できます。

解雇予告手当が出ないと言われましたが、取り戻せますか

解雇された日が試用開始から14日を超えていた(15日目以降だった)なら、そもそも予告手当の対象です。日数を確認したうえで、労働組合や弁護士に相談すると請求を進めやすくなります。

試用期間中でも有給休暇は使えますか

年次有給休暇は入社から6か月の継続勤務と8割以上の出勤で付与されるため、試用期間の序盤ではまだ発生していないのが通常です。そのため、解雇までの期間を有給で埋めるのは難しいケースが多くなります。

解雇された理由を書面でもらえますか

会社に対して、解雇の理由を記した書面を求めることができます。後で解雇の当否を検討したり、専門家に相談したりするときの土台になるため、可能な限り受け取っておくことをおすすめします。

参考・出典

  • 労働基準法 20条・21条・39条(解雇の予告、予告の適用除外、年次有給休暇)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
  • 労働契約法 16条(解雇権濫用法理)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
  • 民法 627条・628条(雇用の解約)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
  • 厚生労働省 解雇・退職に関する基礎知識 https://www.mhlw.go.jp/
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