有給の買取相場は1日いくら?|認められる場面

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退職が決まったのに有給休暇が10日以上残っている。最終出社日までに全部は消化しきれそうにない。そんなとき「余った分をお金に換えてもらえないか」「有給の買取相場は1日いくらなのか」と考える人は少なくありません。結論を先に言うと、有給の買取に公的な統計としての相場は存在しません。そもそも会社が有給を買い取ること(買上げ)は法律上、原則として認められていないからです。金額を知りたいなら、相場を探すのではなく、労働基準法が定める賃金の算定方式で「自分の1日分」を計算するのが正しい順序になります。この記事では、買取が原則違法である理由と例外的に認められる場面を整理したうえで、1日あたりの金額を自分で出す3つの計算方法を示します。

有給の「買上げ」が原則として認められない理由

年次有給休暇(労働基準法39条で定められた、賃金が支払われる休暇)は、労働者が実際に休んで心身を回復させることを目的とした制度です。あらかじめ買い取る約束をして休ませないことは、この目的に反します。行政の解釈でも、年次有給休暇の買上げの予約をし、その分だけ休暇日数を減らしたり請求された日数を与えなかったりすることは労働基準法39条違反になるとされています(昭和30年9月10日 基収第4718号)。

つまり「入社時から有給は使わせない代わりに毎年まとめて買い取る」といった運用は、原則として違法です。会社側に買い取る義務があるわけでもありません。だからこそ、家電量販店の商品のように決まった「買取相場」は公表されていないのです。まず押さえるべきは、買取はあくまで例外的な取り扱いだ、という点です。

買取が例外的に認められる3つの場面

原則違法とはいえ、休暇そのものを取り上げるわけではなく、結果的に残ってしまった分を金銭で清算するケースは、違法とまでは言えないと考えられています。実務で買取が問題になりにくいのは、次の場面です。

  • 退職・解雇で消化しきれなかった分。退職日が決まり、残りの勤務日数では使い切れない有給が残った場合。退職後は権利を行使できないため、清算する余地があります。
  • 法定の日数を上回る部分。会社が独自に、法律の付与日数より多く有給を与えている場合、その上乗せ分は法の対象外なので買い取っても差し支えないと解されています。
  • 時効で消えた分。有給の請求権は2年で時効消滅します(労働基準法115条)。消滅した分について会社が任意に金銭を払うことは、労働者に不利益を与えないため問題になりにくい取り扱いです。

いずれも「会社が応じれば」という前提つきです。買い取るかどうか、いくらで買い取るかは法律で決まっておらず、労使の合意によります。退職の場面で最も現実的なのは、買取を求めることよりも、残った有給をきちんと消化してから退職することです。

買取額の計算に使う3つの賃金方式(労基法39条9項)

買取の相場がない以上、金額の目安は「有給を1日取ったときにいくら支払われるか」から逆算します。有給1日分の賃金は、労働基準法39条9項で次の3方式のいずれかと定められており、どれを使うかは就業規則などで決められています。

方式 1日分の計算の考え方 特徴
通常の賃金 所定労働時間を働いた場合に支払われる通常の賃金 月給者は普段どおりの日額。計算が簡単で採用が多い
平均賃金 労働基準法12条の平均賃金(下記の計算式) 直近3か月の実績で決まる。日給・時給者に使われやすい
標準報酬日額 健康保険の標準報酬月額を30で割った額 採用には労使協定が必要

買取に応じる会社は、有給1日分の賃金額をベースに残日数を掛けて清算するのが一般的な考え方です。したがって、まず自分の勤務先がどの方式かを就業規則で確認し、1日分の金額を出すことが出発点になります。

平均賃金で1日分を出す手順と計算例(労基法12条)

3方式のうち計算が分かりにくいのが平均賃金です。労働基準法12条では、平均賃金を次のように定めています。

平均賃金 = 直前3か月間に支払われた賃金の総額 ÷ その3か月間の総日数(暦日数)

「総日数」は勤務日数ではなく、カレンダー上の日数(暦日数)である点に注意してください。ここでは金額の考え方を示すための仮の数字で流れを追います。実際の金額は自分の給与明細に置き換えて計算してください。

  • 直前3か月の賃金総額を仮に90万円、その期間の暦日数を92日とする
  • 平均賃金 = 900,000円 ÷ 92日 = 約9,782円(1日分)
  • 残った有給が10日なら 9,782円 × 10日 = 約97,820円が清算額の目安

日給・時給で働く人は、賃金総額を暦日数で割る方法だと金額が低く出やすいため、労働基準法12条は「賃金総額 ÷ 実際に働いた日数 × 60%」で計算した額と比べ、高い方を平均賃金とする最低保障を定めています。パートやアルバイトの人は、この保障額も確認しておくと安心です。金額はあくまで有給1日分の賃金であり、実際に買い取ってもらえるか、いくらで合意できるかは会社との話し合い次第です。

退職時、買い取ってもらう前に確認したいこと

買取は会社に義務がなく、断られれば実現しません。一方で、残った有給を消化してから退職日を設定すれば、買取を交渉しなくても賃金は満額受け取れます。有給消化中も在籍扱いで賃金が発生するため、金額面では消化のほうが確実です。優先順位としては、まず消化できないかを検討し、日程的にどうしても消化しきれない分だけ買取を相談する、という順序が現実的です。

下の判断フローで、自分がどちらに向くかを確認してください。

  • 退職日まで残日数を消化できる → 消化を優先(買取交渉は不要)
  • 消化しきれない分が残る → 会社に買取の可否と方式を確認(応じる義務はない点に留意)
  • 会社が消化も買取も渋る → 有給消化は労働者の権利であり、退職時に拒否するのは問題。交渉・請求を検討

「退職を切り出すと有給を使わせてもらえない」「買取どころか消化も拒まれる」という職場では、自分で交渉するのが難しいこともあります。有給の消化や残日数の扱いを会社と交渉できるかは、退職代行の運営主体(民間企業・労働組合・弁護士)によって違います。交渉ができる型とできない型の線引きは、退職代行おすすめ8社比較|有給交渉できるのはどの型かで公式サイト確認済みの料金とあわせて整理しています。

よくある質問

有給の買取相場は1日いくらですか

公的な統計としての相場はありません。買上げは原則違法で、金額も法律で決まっていないためです。目安を知りたい場合は、有給1日分の賃金(通常の賃金・平均賃金・標準報酬日額のいずれか)を計算し、残日数を掛けて考えます。

会社に有給を買い取る義務はありますか

ありません。退職時などに残った分を清算するかどうかは会社の任意で、金額も労使の合意によります。買取を断られること自体は違法ではありません。

買上げが原則違法なのに、退職時は認められるのはなぜですか

買上げが違法とされるのは、休暇を取らせない目的で予約するような場合です(昭和30年9月10日 基収第4718号)。退職で消化しきれず結果的に残った分を清算することは、休暇の権利を奪うものではないため、違法とまでは言えないと考えられています。

時効で消えた有給は買い取ってもらえますか

有給の請求権は2年で時効消滅します。消滅した分を会社が任意に金銭で清算することは、労働者に不利益がないため問題になりにくい取り扱いです。ただし応じるかは会社の判断です。

買取と有給消化、どちらが得ですか

金額面では、日程が許せば消化のほうが確実です。消化中も在籍扱いで賃金が発生するのに対し、買取は会社が応じるとは限らず、金額も交渉次第だからです。まず消化を検討し、残る分だけ買取を相談するのが現実的です。

買い取ってもらった金額に税金はかかりますか

退職に伴う有給の清算金の課税上の扱いは、支払いの名目や時期によって異なります。個別の判断は税務署や税理士に確認するのが確実です。本記事では税額の目安は示していません。

参考・出典

  • 労働基準法(第12条 平均賃金/第39条 年次有給休暇/第115条 時効) e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/
  • 年次有給休暇の買上げに関する行政解釈(昭和30年9月10日 基収第4718号)
  • 厚生労働省「年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています」 https://www.mhlw.go.jp/
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