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派遣先の職場が合わず、まだ契約期間が2か月残っているのに今すぐ辞めたい。体調を崩したのに次の更新まで我慢しろと言われた。こうした「期間の途中で辞められるのか」という不安は、正社員とは前提が違う派遣特有のものです。派遣社員の多くは派遣会社と期間の定めのある雇用契約(有期契約)を結んでおり、正社員のように「2週間前に伝えれば辞められる」というルールがそのままは当てはまりません。ただし、途中で辞める道が完全に閉ざされているわけではありません。辞められるかどうかは、「やむを得ない事由があるか」「契約開始から1年を過ぎているか」「派遣会社の合意が得られるか」の3点で決まります。この記事では、契約期間中に退職が認められる法的な条件だけに絞って整理します。
派遣社員が契約期間中に辞められる3つの入口

有期契約の途中退職には、根拠となる法律や状況が異なる3つの入口があります。自分がどれに当てはまるかで、辞め方も、もめたときのリスクも変わります。
| 入口 | 条件 | 根拠・結果 |
|---|---|---|
| やむを得ない事由による解除 | 病気・けが、家族の介護、給与未払い、ハラスメントなど契約継続が困難な事情がある | 民法628条により即時に契約を解除できるとされる |
| 契約1年経過後の申出 | 契約の初日から1年を過ぎている | 労働基準法の特例により申出で退職できるとされる(下記で詳述) |
| 合意による中途解約 | やむを得ない事由がなくても、派遣会社が退職に同意する | 双方の合意があれば期間中でも退職が成立する |
正社員など期間の定めのない雇用であれば、退職を申し入れてから2週間の経過で契約が終了します(民法627条1項)。しかし有期契約の派遣社員は、原則として契約期間を満了するまで働くことが前提になっているため、この2週間ルールとは別の入口を通る必要があります。
民法628条「やむを得ない事由」とは何を指すか
有期契約の途中退職でもっとも頼りになるのが民法628条です。当事者に「やむを得ない事由」があるときは、契約期間の途中でも直ちに契約を解除できると定めています。問題は、何が「やむを得ない事由」に当たるかが条文に列挙されていない点です。実務では、次のような事情が該当し得ると説明されることが多いものです。
- 本人の病気やけがで、その業務を続けることが難しい
- 家族の介護や看護が必要になり、就業を続けられない
- 給与の未払い、賃金の一方的な引き下げがある
- ハラスメントや、契約時に説明された条件と実際の労働条件が大きく違う
逆に、「仕事がつまらない」「人間関係がなんとなく嫌」といった主観的な理由だけでは、やむを得ない事由と認められにくいとされます。該当するかどうかは個別の事情で判断が分かれるため、診断書やメールの記録など、事情を裏づける資料をそろえておくことが大切です。なお、やむを得ない事由が「一方の過失」によって生じた場合には、相手方に損害賠償を求められることがある点も条文に定められています。
契約開始から1年を過ぎているか(労働基準法の特例)

やむを得ない事由がなくても、契約の初日から一定期間が過ぎていれば、労働者からの申出で退職できるとする特例が労働基準法にあります。これは、有期契約に人を長く縛りつけないための仕組みです。適用される契約の範囲や起算の考え方には条件があるため、自分のケースに当てはまるかは契約書と就業開始日を確認したうえで判断してください。
短期の契約を繰り返し更新して働いている場合は、「通算」か「1本ごと」かで扱いが変わることがあります。判断に迷う場合は、契約書の期間欄と、これまでの更新履歴を手元に用意してから相談するとよいでしょう。
途中退職できるかの判断フロー
自分がどの入口を使えるかは、次の順で確認すると整理しやすくなります。
- 病気・介護・未払い・ハラスメントなど、契約を続けられない事情があるか。あれば、民法628条の「やむを得ない事由」による途中解除を検討する。裏づけ資料をそろえる。
- その事情がない場合、契約開始から1年を過ぎているか。過ぎていれば、労働基準法の特例による申出退職を検討する(上記の要確認事項を確認)。
- どちらも当てはまらない場合、派遣会社の合意を得られるか。合意による中途解約であれば期間中でも辞められる。合意が得られないまま無断で出社をやめると、契約違反として不利になり得る。
ここで注意したいのは、連絡する相手です。派遣社員の雇用契約は派遣会社との間にあるため、退職の申出も原則として派遣会社に対して行います。派遣先に直接「辞めます」と言うだけでは手続きが進みません(派遣会社と派遣先のどちらに連絡するかは別記事で詳しく扱います)。
合意が得られないときの損害賠償リスク

やむを得ない事由も1年経過もなく、派遣会社の合意も得られないまま契約期間の途中で一方的に辞めると、理屈のうえでは会社が被った損害の賠償を求められる可能性があります。ただし、あらかじめ「辞めたら違約金いくら」と金額を決めておく契約は労働基準法で禁止されており、実際に賠償が認められるには会社が具体的な損害額を立証する必要があります。退職の意思を伝えただけで高額な請求が通るケースは多くありません。
とはいえ、無断欠勤のまま連絡を絶つ辞め方は、離職票や社会保険の手続きが滞る原因になり、あとで自分が困ります。もめそうなとき、あるいは体調やハラスメントで自分から連絡するのがつらいときは、退職代行(退職の意思表示を本人に代わって会社へ伝えるサービス)を使う選択肢があります。派遣の途中退職は、有給休暇が残っていればその消化とあわせて調整することもあり、有給や未払い賃金の交渉が必要なら、交渉権のある労働組合が運営する型か弁護士が対応する型を選ぶのが基本です。単に意思を伝えるだけの民間型では、会社と条件を交渉することはできません。型ごとの違いは退職代行の比較記事で確認できます。
費用の目安として、派遣社員の依頼を受け付ける代行の料金は、公式サイトで確認した価格で正社員・契約・派遣が一律22,000円という例があります(2026年9月時点・公式サイト確認)。相場としては民間型がおおむね2万〜3万円台、弁護士型は着手金27,500円からで、回収額に応じた成功報酬が加わる形が中心です(2026年9月時点)。
よくある質問
派遣は契約期間中でも「2週間前に言えば辞められる」のですか。
その2週間ルール(民法627条1項)は期間の定めのない雇用の場合です。有期契約の派遣社員には原則そのまま当てはまらず、やむを得ない事由、契約1年経過後の申出、または派遣会社の合意のいずれかが必要になります。
体調不良は「やむを得ない事由」になりますか。
病気やけがで業務の継続が難しい状態であれば、民法628条のやむを得ない事由に該当し得ます。医師の診断書など、状態を裏づける資料を用意しておくと説明がスムーズです。効果や回復の程度には個人差があるため、無理をせず医療機関の判断を優先してください。
契約期間の途中で辞めたら違約金を取られますか。
あらかじめ違約金の額を定める契約は労働基準法で禁止されています。実際に損害賠償が認められるには、会社が具体的な損害を立証する必要があり、退職の申出だけで高額請求が通ることは多くありません。ただし無断欠勤は避け、手続きは踏んでください。
退職の連絡は派遣先にすればよいですか。
雇用契約は派遣会社との間にあるため、退職の申出は派遣会社に対して行うのが原則です。派遣先への連絡だけでは退職手続きは進みません。
やむを得ない事由がなくても今すぐ辞める方法はありますか。
契約開始から1年を過ぎていれば労働基準法の特例による申出退職を検討できます。1年未満でやむを得ない事由もない場合は、派遣会社の合意を得る道が現実的です。残っている有給休暇があれば、その消化とあわせて退職日を調整する方法もあります。
参考・出典
- 民法627条・628条(e-Gov法令検索で条文確認)
- 退職代行モームリ 公式サイト https://momuri.com/ (2026年9月時点)

