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クライアント先に常駐して働く業務委託(会社と雇用契約ではなく、仕事を請け負う契約を結ぶ働き方)のエンジニアやデザイナー、あるいは個人事業主として1社と長く付き合ってきた人が、「もう続けられない。でも契約期間の途中だし、抜けたら損害賠償を請求されるのではないか」と不安になって退職代行を探す、というケースが増えています。ここで最初に押さえておくべき結論は、業務委託には「退職」という手続きがそもそも存在しないということです。あなたが結んでいるのが本当の業務委託契約なら、労働者としての退職ではなく、民法にもとづく「契約の解除」で関係を終わらせます。だからこそ、労働者向けに作られた安価な退職代行がそのまま当てはまるとは限らず、契約の中身と損害賠償のリスクを見てから依頼先を選ぶ必要があります。
業務委託の「退職」は退職ではない|まず契約の種類を確かめる

退職代行は本来、会社に雇われている労働者(正社員・契約社員・パートなど)が使う仕組みです。労働者が辞めるときの根拠は民法627条1項で、期間の定めのない雇用なら申入れから2週間で終了します。ところが業務委託は雇用ではありません。会社の指揮命令を受けて働くのではなく、独立した立場で仕事を受ける契約なので、「退職届を出す」「離職票をもらう」といった労働者向けの手続きは発生しません。
まず、自分の契約が次のどれに近いかを確かめてください。呼び方が「業務委託」でも、法律上の性質はケースで異なります。
- 準委任型:時間や労力を提供して業務を遂行するタイプ(常駐エンジニア、コンサル、営業代行など)。成果物の完成そのものは約束していない。
- 請負型:成果物の完成を約束するタイプ(Web制作一式、システム開発の受託など)。納品して初めて報酬が確定する。
- 偽装請負(実態は雇用):契約書は業務委託でも、実際は出退勤を管理され、業務内容を細かく指示され、他社の仕事を受ける自由がない。この場合は実態で判断され、労働者として扱われる可能性があります。
「実態は雇用」だった場合は通常の退職代行が使える
もし働き方の実態が労働者に近い(偽装請負)なら、契約書の名前にかかわらず労働基準法や民法627条の保護を受けられる可能性があります。この場合は通常の退職代行の土俵に乗り、有給や未払い賃金の話も出てきます。判断が難しい領域なので、実態が雇用に近いと感じるなら、契約書の文言だけで自己判断せず専門家に見てもらうのが安全です。有給交渉ができる業者の型の違いは退職代行おすすめ8社比較|有給交渉できるのはどの型かで整理しています。
民法651条|委任契約はいつでも解除できる
本当の業務委託(準委任)なら、契約を終わらせる根拠は民法651条です。ここが今回の記事のいちばん重要な部分です。
民法651条1項は、委任契約は各当事者がいつでも解除できると定めています。つまり、あなたの側からいつでも「やめます」と言えるのが原則です。契約期間が「1年間」と書いてあっても、期間の途中で解除する自由自体は認められています。「期間の定めがあるから途中で抜けられない」という思い込みで動けなくなっている人が多いのですが、法律の建前としては、いつでも解除の意思表示はできます。
「不利な時期」の解除と損害賠償(民法651条2項)
ただし、自由に解除できることと、まったく責任を負わないことは別です。民法651条2項は、次の場合には相手方に生じた損害を賠償しなければならないとしています。
- 相手方に不利な時期に解除したとき
- 委任者(発注側)の利益だけでなく受任者(あなた)の利益をも目的とする委任を解除したとき
重要なのは、この損害賠償は「やむを得ない事由があるとき」は免れる点、そして賠償の範囲が解除の時期が不利だったことで生じた損害に限られる点です。契約全体の報酬額まるごとを弁償させられる、という性質のものではありません。たとえば、後任が見つかるまでの一時的な追加コストなどが想定される範囲で、会社が「残り契約分の売上をすべて払え」と主張しても、そのまま通るとは限りません。損害賠償を実際に請求される・される場合にいくらになるかは契約内容と個別事情によるため、ここで金額を断定することはできません。引き継ぎ放棄が争点になりやすい点は比較記事と併せて、契約書の解除条項・違約金条項を必ず確認してください。
なお、成果物の完成を約束した請負型は解除のルールが準委任と異なり、途中で抜けると発注者の損害との関係がより問題になりやすいので、請負契約の途中解除はとくに慎重な判断が要ります。
判断フロー|あなたのケースで誰に頼むべきか

業務委託で「辞めたい」ときの依頼先は、労働者の退職代行とは選び方が変わります。次の順で考えると整理できます。
- 実態は雇用に近いか?(出退勤管理・細かい指示・専属性がある) → はい:通常の退職代行の対象になりうる。労働組合型・弁護士型を検討。
- 純粋な業務委託か? → はい:次へ。
- 契約書に違約金・損害賠償条項があるか/会社から賠償をちらつかされているか? → はい:弁護士型。損害賠償の主張への反論や交渉は法律事務にあたり、弁護士以外は代理できません(弁護士法72条)。
- 未払いの報酬を回収したいか? → はい:弁護士型。金銭の請求・交渉が必要。
- 賠償リスクも未払いもなく、意思表示を伝えるだけでよいか? → はい:民間業者でも「解除を伝える」ことは可能。ただし交渉はできない。
業務委託は「交渉」や「損害賠償への対応」が絡みやすく、その多くが弁護士でなければ代理できない法律事務です。契約解除に金銭トラブルが乗っている場合は、弁護士型が現実的な選択肢になります。
弁護士型に頼む場合の費用の内訳
弁護士型の代表である弁護士法人みやびは、業務委託・役員のケースを着手金の区分として明示しています(2026年9月時点・公式サイト確認)。料金は下表のとおりで、着手金に加えて金銭を回収できた場合の成功報酬がかかります。
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 着手金(会社員・アルバイト・契約社員) | 27,500円 | 労働者としての退職代行 |
| 着手金(公務員対応) | 55,000円 | 公務員のケース |
| 着手金(自衛隊・業務委託・役員) | 77,000円 | 業務委託はこの区分 |
| 成功報酬 | 回収額の20%+税 | 未払い報酬などを回収できた場合 |
費用の目安を計算例で示します。着手金は依頼時にかかる固定費、成功報酬は実際にお金を取り戻せたときだけその額に応じてかかる、という二段構えです。
- 着手金:77,000円(業務委託区分)
- 仮に未払い報酬30万円を回収できた場合の成功報酬:300,000円 × 20% = 60,000円、これに税10%を加えて 66,000円
- 合計の目安:77,000円 + 66,000円 = 143,000円(回収がなければ着手金の77,000円のみ)
回収する金銭がない(辞めるだけの)ケースなら着手金だけで済みますし、未払いがあってそれを取り戻せるなら成功報酬を差し引いても手元に残る計算になります。なお、裁判にまで発展する場合は別途費用がかかる点、返金保証の有無は公式に記載がない点も確認しておいてください(2026年9月時点・公式サイト確認)。上記の30万円はあくまで計算を示すための仮の金額で、実際の回収額・報酬額は個別の契約と事情によって変わります。
民間・労働組合の退職代行が業務委託で使いにくい理由

労働者向けの安い退職代行がそのまま使えないのは、次の理由からです。
民間業者は交渉ができない。報酬を目的に法律事務(交渉)を行うことは弁護士法72条で禁じられています。民間業者ができるのは「辞めたいという意思を会社へ伝える」ことまでで、損害賠償の主張に反論したり、未払い報酬の支払いを求めて交渉したりはできません。業務委託は金銭の話が絡みやすいので、伝達だけでは足りない場面が多くなります。
労働組合型は「労働者」であることが前提になりやすい。労働組合が団体交渉権を持つのは労働者の団体だからで、純粋な業務委託(独立した事業者)は労働者にあたらないケースがあります。実態が雇用に近ければ団体交渉の余地はありますが、契約上も実態上も独立した事業者なら、労働組合型が想定する枠組みから外れることがあります。
つまり、業務委託で交渉や損害賠償対応が必要なら、法律事務を正面から扱える弁護士型に頼むのが筋の通った選び方になります。逆に、賠償リスクも未払いもなく「もう関わりたくない、意思表示だけ代わりに伝えてほしい」だけなら、民間業者で足りる場合もあります。自分がどちらかを、上の判断フローで見極めてください。
よくある質問
業務委託でも退職代行は使えますか。
厳密には「退職」ではなく契約の解除になりますが、代行を頼むこと自体は可能です。ただし交渉や損害賠償対応が必要なら弁護士型を選ぶ必要があります。交渉ができない民間業者は「解除を伝える」ところまでしか対応できません。
契約期間の途中でも辞められますか。
準委任にあたる業務委託なら、民法651条1項で各当事者がいつでも解除できるとされています。期間の定めがあっても解除の意思表示自体は可能です。ただし解除の時期によっては損害賠償の問題が生じることがあるため、契約書の条項を確認してください。
辞めたら本当に損害賠償を請求されますか。
民法651条2項により、相手に不利な時期の解除などでは損害を賠償する場合があります。ただし賠償の範囲は「時期が不利だったことで生じた損害」に限られ、契約全額を弁償させられる性質のものではありません。やむを得ない事由があれば免れることもあります。金額は個別事情によるため一律には言えません。
「業務委託」と書いてあるのに実際は社員のように働いています。どう扱われますか。
契約書の名前ではなく実態で判断されます。出退勤を管理され、業務を細かく指示され、専属で働いているなら、労働者として扱われる可能性があります。この場合は労働者向けの退職代行や労働法の保護が使えることがあるので、実態を専門家に確認してもらうのが安全です。
弁護士に頼むと費用はどのくらいですか。
弁護士法人みやびの場合、業務委託の着手金は77,000円で、未払い報酬などを回収できたときは回収額の20%+税の成功報酬がかかります(2026年9月時点・公式サイト確認)。回収する金銭がなければ着手金のみで済みます。
未払いの報酬があるのですが、一緒に請求してもらえますか。
未払い報酬の請求・交渉は法律事務にあたるため、弁護士型であれば対応できます。民間業者や、労働者を前提とする労働組合型では対応できない、または対応範囲が限られることがあります。
参考・出典
- 弁護士法人みやび(退職代行サービス)公式サイト:https://taishoku-service.com/
- 民法(e-Gov法令検索)第651条・第627条:https://laws.e-gov.go.jp/
- 弁護士法(e-Gov法令検索)第72条:https://laws.e-gov.go.jp/

