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勤続30年で定年や転職を迎える中小企業の従業員から、「ニュースで見た平均退職金と、うちの会社でもらえそうな額が全然違う」という戸惑いをよく聞きます。さらに困るのが、就業規則を見ても退職金の規定が見当たらないケースです。そもそも自分の会社に退職金があるのか、あるとしたら勤続30年でいくらが目安なのか、判断材料がないまま退職日が近づいてしまう人が少なくありません。
結論から言えば、中小企業の退職金は「大企業の平均額」ではなく、中小企業だけを対象にした統計と、自社の退職金規定の中身の二つで見積もるのが正解です。そして退職金は法律で一律に義務づけられた制度ではないため、規定があるかどうかが支払義務の有無を分けます。この記事では、相場の正しい確認先、退職金の内訳の考え方、規定がない場合の扱いを順に整理します。
勤続30年でも「大企業の平均」を当てると外れる

退職金の相場としてよく引用される高額な平均値は、多くが大企業や上場企業を中心に集めた調査によるものです。大企業は退職金の支給率が高く、企業年金を併用していることも多いため、平均額が押し上げられます。中小企業はそもそも退職金制度がない会社が一定割合あり、あっても支給水準は大企業より低い傾向があるため、大企業中心の平均をそのまま中小企業の勤続30年に当てはめると、実際より大きく上振れした金額を期待してしまいます。
相場を見るときは、調査対象が「大企業を含む全体」なのか「中小企業だけ」なのかを最初に確認してください。同じ勤続30年でも、対象が違えばモデル退職金の額は大きく変わります。
中小企業の勤続30年のモデル退職金を確認する
中小企業に絞った退職金の実態を調べるとき、実務でよく参照されるのが東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情」です。この調査は、都内の中小企業を対象に、勤続年数別・学歴別のモデル退職金(一定のモデル従業員が退職した場合の想定額)を公表しています。勤続30年のモデル退職金の具体的な金額は、該当年版の数値を確認して当てはめる必要があります。
本記事では推測の金額を載せないため、実額は次の一次資料で確認してください。
| 確認先 | 調べられること | 特徴 |
|---|---|---|
| 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」 | 中小企業の勤続年数別モデル退職金、自己都合・会社都合別 | 中小企業に対象を絞っている。勤続30年の目安は 公式サイトで確認 |
| 厚生労働省「就労条件総合調査」 | 企業規模別・勤続年数別の退職給付額 | 大企業を含む全体。規模別に分けて読む必要がある。数値は 公式サイトで確認 |
| 中小企業退職金共済(中退共) | 掛金と納付月数に応じた退職金額 | 中退共に加入している会社なら、掛金月額から支給額を試算できる |
まず自社の就業規則や退職金規程を読み、退職金の算定方法が書かれていればそれが最優先です。規程がない、または一般的な相場を知りたい場合に、上記の統計を目安として使う順番になります。
退職金の内訳と試算のしかた

中小企業でよく使われる退職金の計算方式は、退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率を掛ける「基本給連動型」です。自己都合か会社都合かで係数が変わる会社も多くあります。内訳を分解すると、次の要素で決まります。
- 算定基礎額(多くは退職時の基本給。自分の給与明細で確認する)
- 勤続年数別の支給率(勤続30年に対応する率。自社規程の表を見る。
- 退職事由係数(自己都合は会社都合より低く設定されることが多い。
試算式は「算定基礎額 × 勤続30年の支給率 × 退職事由係数」です。たとえば自社の退職金規程に支給率の表が載っていれば、退職時の基本給に自分の勤続年数の率を掛けるだけで概算が出ます。ここで注意したいのは、基本給が低く設定され手当が多い給与体系の会社では、算定基礎額が小さくなり退職金も少なくなる点です。手取りの月給が同じでも、退職金は基本給の比率で大きく差が出ます。
中退共に加入している会社の場合は、この計算式ではなく、掛金月額と納付月数で退職金が決まります。加入の有無は就業規則や給与担当者に確認してください。
退職金の規定がない会社では支払義務があるか
退職金は、すべての会社が必ず支払わなければならない法定の制度ではありません。退職金の支払義務が生じるのは、就業規則や退職金規程、労働契約、または確立した慣行によって、支給条件が定められている場合です。逆に言えば、どこにも定めがなく慣行もない会社では、退職金が支払われなくても直ちに違法とは言えません。
自分の会社に支払義務があるかは、次の順で確認すると判断しやすくなります。
- 就業規則または退職金規程に退職金の定めがあるか。あれば、その条件どおりに支払義務がある。
- 規程がなくても、労働契約書や求人票、内定通知に退職金の記載があるか。あれば契約の内容として請求できる可能性がある。
- いずれもない場合でも、これまで退職者に継続して退職金が支払われてきた慣行があるか。慣行が認められれば請求できる余地がある。
- 規程も契約も慣行もない場合は、退職金が支払われない扱いになり得る。
「規定なし」でも即あきらめる前に、過去の退職者への支給実績を確認する価値があります。判断が難しいときや会社が支払いを拒む場合は、労働問題に対応できる専門家への相談が現実的です。
自己都合と会社都合で目安はどう変わるか

同じ勤続30年でも、自己都合退職と会社都合退職(倒産・解雇・退職勧奨など)では、退職金の額が変わる会社が多くあります。自己都合には低めの係数を掛け、会社都合には満額に近い係数を掛ける設計が一般的です。早期退職や退職勧奨に応じる場合は、通常の退職金に上乗せがつくこともありますが、その金額は会社ごとの提示によります。
退職代行を使って辞める場合でも、退職金規程に定めがあれば受け取る権利は変わりません。ただし規程がない、または退職金の交渉が必要なケースでは、依頼する業者の型によって対応できる範囲が異なります。退職金の交渉可否を含めた業者の違いは、退職代行おすすめ8社比較で運営主体ごとに整理しています。
よくある質問
中小企業で勤続30年の退職金の平均はいくらですか
大企業を含む全体の平均と、中小企業だけの平均は大きく異なります。中小企業の勤続30年のモデル退職金は、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情」の該当年版で確認するのが確実です。本記事では推測額を載せていないため、一次資料の数値をご確認ください。
退職金の規定がない会社では、まったくもらえないのですか
規程・労働契約・慣行のいずれにも退職金の定めがなければ、支払義務が生じないため支給されない扱いになり得ます。ただし過去の退職者に継続して支払われてきた慣行があれば請求できる余地があるため、支給実績の有無を確認してください。
基本給が低いと退職金も少なくなりますか
基本給連動型の会社では、算定基礎額が退職時の基本給になるため、基本給が低く手当が多い給与体系だと退職金は少なくなりやすいです。手取り月給が同じでも、基本給の比率で退職金の額は変わります。
自己都合と会社都合で退職金は変わりますか
変わる会社が多くあります。自己都合には低めの係数、会社都合には満額に近い係数を掛ける設計が一般的です。具体的な係数は自社の退職金規程で確認してください。
退職代行を使うと退職金は減りますか
退職金規程に定めがあれば、退職代行の利用を理由に減額される法的な根拠はありません。減額の可否や交渉が必要な場合の対応範囲は業者の型によって異なるため、比較記事で運営主体ごとの対応を確認してください。
中退共に入っている会社の退職金はどう計算しますか
中小企業退職金共済に加入している会社では、基本給連動ではなく、掛金月額と納付月数に応じて退職金額が決まります。加入の有無と掛金額は就業規則や給与担当者に確認してください。
参考・出典
- 厚生労働省「就労条件総合調査」
- e-Gov法令検索 民法(第627条・期間の定めのない雇用の解約)

