有給の条件 全労働日とは|8割出勤の数え方

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「昨年は産前産後の休業と育児休業で半年近く会社を休んだ。今年の有給休暇はもらえないのだろうか」。長く休んだ年や、私傷病で欠勤が続いた年は、多くの人がこの不安を抱えます。有給休暇(年次有給休暇=一定日数まで賃金が支払われる休暇)が付くかどうかは、その一年で「全労働日の8割以上出勤したか」という一点で決まります。ここで大切なのは、産休や労災による休みは実際には働いていなくても「出勤した日」として数えるという例外があることです。つまり、実際に働いた日数だけを単純に足して8割を判断するわけではありません。この記事では、判断の分かれ目になる「全労働日」の意味と、8割の正しい数え方、そして8割に届かなかった年の扱いまでを、条文と行政の通達(役所が示す法令の運用ルール)に沿って整理します。

有給が付くかは「全労働日の8割」で決まる

年次有給休暇は、労働基準法39条1項で「雇入れの日から6か月間継続して勤務し、その6か月間の全労働日の8割以上出勤した労働者」に与えられると定められています。以後は1年ごとに、直前の1年間で全労働日の8割以上出勤していれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。付与される具体的な日数は勤続年数や労働時間で変わりますが、その入り口の条件が「全労働日の8割」です。

この8割は、次の式で判断します。

  • 出勤率 = 出勤した日数 ÷ 全労働日 × 100
  • この出勤率が80%以上であれば、その期間に対応する有給休暇が付与されます。

ポイントは分母と分子の数え方です。分母である「全労働日」に何を入れるか、分子である「出勤した日数」に何を含めるかで、結果が大きく変わります。8割の判断でつまずく人の多くは、この二つの中身を誤って理解しています。

「全労働日」とは何を指すのか

全労働日とは、就業規則や労働契約で労働義務があると定められた日の総数を指します。1年間の暦日(365日)ではありません。土日や祝日など、あらかじめ休みと決められている「所定休日」は、そもそも働く義務がない日なので全労働日には含めません。

たとえば週休2日制で祝日も休みの会社なら、年間の全労働日はおおむね240日前後になります(会社のカレンダーによって異なります)。この240日といった数字が分母になり、そのうち何日出勤したかで8割を判断します。

さらに、厚生労働省の通達(平成25年7月10日基発0710第3号)は、本来は労働義務がある日であっても、次のような日は全労働日から除外する(分母から抜く)と示しています。

  • 使用者(会社)の責めに帰すべき事由による休業日(会社都合の休業)
  • 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務が提供されなかった日
  • 休日労働をした日

これらは「働くはずだったのに、労働者の責任ではない事情で働けなかった日」なので、分母から外して8割を計算します。分母が小さくなる分、労働者に不利にならない仕組みです。

産休・労災・育休の日は「出勤したもの」として数える

8割の計算でもっとも誤解が多いのが、休んだ日の扱いです。労働基準法39条10項は、次の休みを「出勤したものとみなす」と定めています。つまり、実際には働いていなくても、分子(出勤した日数)に加えて計算します。

  • 業務上の負傷や疾病(労災)で療養のために休業した期間
  • 育児・介護休業法による育児休業・介護休業をした期間
  • 産前産後の休業をした期間
  • 年次有給休暇を取得した日

一方で、業務外の私傷病(自分のケガや病気)による欠勤は、この「出勤したものとみなす」対象には入りません。分母(全労働日)には残ったまま、分子には入らないため、私傷病の欠勤が多い年は出勤率が下がります。休んだ理由によって扱いが分かれる点を、下の表で整理します。

休み・出勤の区分 8割の計算での扱い
実際に出勤した日 出勤日に算入(分子)
年次有給休暇を取得した日 出勤したものとみなす(分子)/39条10項
産前産後の休業 出勤したものとみなす(分子)/39条10項
育児休業・介護休業 出勤したものとみなす(分子)/39条10項
労災による療養の休業 出勤したものとみなす(分子)/39条10項
私傷病(業務外)による欠勤 欠勤扱い(分子に入らない)
会社都合の休業・正当な争議行為の日 全労働日から除外(分母から抜く)/通達
所定休日(土日・祝日など) そもそも全労働日に含まない

8割出勤の数え方(計算例)

具体的な数字で確認します。全労働日を仮に年間240日とします。

例1:産休・労災・年休を挟んだ年

  • 実際の出勤:170日
  • 産前産後の休業:30日
  • 労災による療養休業:10日
  • 取得した年次有給休暇:10日
  • 私傷病による欠勤:20日

39条10項により、産休30日・労災10日・年休10日の計50日は出勤したものとみなします。分子は「出勤170日+みなし50日=220日」です。出勤率は220 ÷ 240 = 約91.6%となり、8割以上を満たすので、その期間の有給休暇が付与されます。実際に働いたのは170日でも、みなしを加えることで8割を超える点がわかります。

例2:私傷病の欠勤が多い年

  • 実際の出勤:160日
  • 私傷病による欠勤:80日(みなしの対象外)

この場合の分子は160日のみで、出勤率は160 ÷ 240 = 約66.7%です。8割に届かないため、その期間に対応する有給休暇は付与されません。同じ「長く休んだ年」でも、理由が労災や産休か、業務外の私傷病かで結論が正反対になります。

その年に有給が付くかを判定する順番

自分のケースを判断するときは、次の順番で確認すると迷いません。

  1. 分母を決める:会社のカレンダーで所定休日を除いた労働義務のある日を数える。会社都合の休業や正当な争議行為の日があれば、そこから除外する。
  2. 分子を決める:実際に出勤した日に、産休・育休・介護休業・労災休業・年次有給休暇の日数を「出勤とみなして」加える。
  3. 私傷病欠勤は分子に入れない:業務外のケガ・病気による欠勤は出勤日に数えない。
  4. 割り算する:分子 ÷ 分母が80%以上なら付与対象、80%未満なら次の項目へ。

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8割未満だった年はどうなるか

ある期間の出勤率が8割未満だった場合、その期間に対応する有給休暇は付与されません。ここで多くの人が心配するのが、「勤続年数そのものがリセットされて、次からまた新入社員と同じ扱いになるのか」という点です。

行政の解釈では、8割未満だった年があっても勤続年数(継続勤務)は途切れないとされています。したがって、翌年の期間で8割以上出勤すれば、その時点の勤続年数に応じた日数の有給休暇が付与されます。8割未満の年は「その年の付与がゼロになる」だけで、それまで積み上げた勤続がなかったことになるわけではありません。ただし、8割未満の年に付与されなかった分がさかのぼって復活するわけではない点には注意が必要です。

なお、いったん付与された有給休暇の時効は2年です。8割を満たして付与された休暇は、取り損ねると2年で消える点は、8割未満の年の扱いとは別の話として押さえておきましょう。

よくある質問

全労働日に土日や祝日は入りますか?

あらかじめ休みと決められている所定休日は、全労働日に含みません。全労働日は労働義務のある日の総数なので、暦日の365日で計算するのではなく、会社のカレンダー上の勤務予定日で数えます。

遅刻や早退をした日は欠勤扱いになりますか?

その日に一部でも労務を提供して出勤していれば、8割の計算上はその日を出勤日として数えます。遅刻・早退があっても、丸一日休んだ欠勤とは扱いが異なります。

有給を使った日は出勤日に数えますか?

労働基準法39条10項により、年次有給休暇を取得した日は出勤したものとみなします。前の年に有給を多く使ったことが、翌年の8割判定で不利になることはありません。

出勤率がちょうど8割の場合はどうなりますか?

条件は「8割以上」なので、ちょうど80%であれば付与の対象です。80%を下回った場合にその期間の付与がなくなります。

会社都合で休業させられた日は分母に入りますか?

使用者(会社)の責めによる休業日は、通達により全労働日から除外して計算します。会社都合で働けなかった日が、労働者の出勤率を下げることはありません。

8割未満だと有給は完全になくなりますか?

その期間に対応する分は付与されませんが、勤続年数は途切れません。翌年の期間で8割以上出勤すれば、勤続年数に応じた日数が付与されます。過去の年に付かなかった分がさかのぼって戻るわけではない点には注意してください。

参考・出典

  • 労働基準法39条(年次有給休暇)/e-Gov法令検索:https://laws.e-gov.go.jp/
  • 厚生労働省 通達 平成25年7月10日基発0710第3号(全労働日の取扱い)/厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「年次有給休暇の付与に関する解説」/厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/
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