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年末や年度末が近づくと、「使っていない有給が今月末で全部消えるのでは」と気になって、慌てて申請を出す人がいます。求人票の締めや上司の「年度が変わるとリセットだから」という一言を真に受けて、実際にはまだ有効な日数を捨ててしまうケースも少なくありません。結論から言うと、有給休暇(年次有給休暇)がなくなる基準は「年度末」ではなく、付与された日から数えて2年です。つまり選ぶべき基準は暦の年度ではなく、自分の「基準日(有給が付与される起算日)」と、そこから2年という時効の2つだけです。この2つさえ押さえれば、いつ何日分が消えるかは正確に計算できます。
有給がなくなる基準は「基準日から2年」

年次有給休暇は、労働基準法39条にもとづき、入社から6か月続けて勤務し、その期間の全労働日の8割以上に出勤した労働者へ与えられます。最初に与えられた日を「基準日」と呼び、以後は基準日を迎えるごとに新しい有給が付与されます。多くの会社では入社日の6か月後が最初の基準日になり、その後は1年ごとに更新されていきます。
ここで誤解が多いのが「リセット」という言葉です。基準日を迎えても、前の年に使い切れなかった有給がその瞬間にゼロになるわけではありません。使われずに残った分は翌年へ繰り越され、新しく付与される分と合算されます。消えていくのは「リセット」ではなく、あくまで時効によって古い分から順に失効していく仕組みです。
繰越できるのは2年まで(労働基準法115条の時効)
有給を請求できる権利には時効があります。労働基準法115条は、この法律による請求権の時効を2年と定めており、年次有給休暇の請求権もこれに含まれます。したがって、付与された有給は付与日から2年が経過すると時効で消滅します。言い換えると、その年に使い切れなくても翌年までは繰り越せますが、翌々年まで持ち越すことはできません。繰越できるのは実質「2年分」と理解しておくと間違いがありません。
賃金など一部の請求権は当分の間3年に延長されていますが、年次有給休暇の時効は2年のままです。「賃金が3年なら有給も3年では」と考えると1年分を取りこぼすため、有給は2年で切れると覚えておくことが安全です。
繰越の計算例(未消化のまま更新した場合)
入社6か月後を最初の基準日とし、その後1年ごとに更新される標準的なケースで、まったく使わずに持ち越すと保有日数がどう動くかを示します。付与日数は労働基準法39条の勤続年数に応じた法定日数です。
| 時点 | 新規付与 | 前年からの繰越 | 保有日数(未消化の場合) | 失効 |
|---|---|---|---|---|
| 入社6か月(1回目の基準日) | 10日 | なし | 10日 | なし |
| 1年6か月(2回目の基準日) | 11日 | 10日 | 21日 | なし |
| 2年6か月(3回目の基準日) | 12日 | 11日 | 23日 | 1回目に付与された10日が時効で消滅 |
このように、2回目の基準日までは前年分を丸ごと繰り越せますが、3回目の基準日を迎えると、最初に付与された分は2年の時効で消えます。保有日数が青天井に増えないのはこのためで、法定日数どおりに付与される場合、繰り越しを含めて保有できるのは最大でも2年分です。付与日数が上限の20日に達する勤続年数では、20日と20日で最大40日を保有できる計算になります。
「有給更新はいつ」と「対象期間」の考え方

「有給はいつ更新されるのか」という疑問への答えは、暦の1月や4月ではなく、自分の基準日です。基準日ごとに新しい日数が付与され、そのタイミングで前年からの繰越と合算されます。会社によっては事務処理を簡単にするため、全社員の基準日を4月1日などにそろえる「一斉付与」を採用していることがあり、その場合は入社時期より早い前倒しの付与になります。自分の基準日がいつかは、給与明細の有給残日数欄や就業規則で確認できます。
「対象期間」という言葉は、主に付与の条件である出勤率を判定する期間を指します。次の基準日に有給が付与されるかどうかは、その直前の1年間(初回は入社からの6か月間)に全労働日の8割以上出勤したかで決まります。この判定期間が対象期間です。対象期間の出勤率が8割に届かないと、その年の付与自体が行われないため、休職や欠勤が多かった年は残日数の見え方が変わることがあります。
自分の有給がいつ消えるかを判断する
今ある残日数のうち、どれがいつ失効するかは次の順で確認すると整理できます。
- 自分の基準日を確認する(給与明細の残日数欄・就業規則・人事へ問い合わせ)。
- 直近2回の基準日で、それぞれ何日付与されたかを確認する。
- 残日数のうち、古い基準日の付与分から順に使われる前提で、どの日数が「付与から2年」に近いかを見る。
- もっとも古い付与分の基準日から2年後が、その日数の失効日にあたる。
有給を使うと、一般的には古い付与分から先に消化される運用が多く、この扱いは新しい分から消化する場合より労働者に有利です。ただし消化順は法律で一律に定められているわけではないため、就業規則の定めを確認しておくと確実です。失効が近い日数があるなら、その基準日から2年を迎える前に計画的に取得することが取りこぼしを防ぐ近道です。
退職時に未消化の有給はどうなるか

退職を決めたとき、残っている有給の扱いは大きく2つに分かれます。1つは退職日までに消化する方法で、有給休暇の時季を指定する権利は労働者にあるため(労働基準法39条5項)、退職前にまとめて取得し、実際の出社を早く終える形が一般的です。もう1つは、消化しきれない分を会社が任意で買い取る方法です。退職時の買取は在職中の買取と扱いが異なり、金額や可否は会社の判断によります。買取の相場や認められる場面については、有給の買取を扱った記事で別途整理しています。
問題は、退職の申し出後に会社が有給の消化を渋るケースです。退職時に有給の取得を一方的に拒むことは、時季変更権(会社が別の日に振り替えられる権利)を退職日以降には行使できない以上、認められません。自分で交渉するのが難しい場合や、会社との連絡自体を避けたい場合は、退職代行のうち団体交渉権を持つ労働組合型や弁護士型であれば、有給の消化について会社と交渉できます。運営主体の3類型(民間・労働組合・弁護士)で交渉できる範囲がどう違うかは、各社の料金や対応範囲を実際に確認してまとめた比較記事で整理しています。
よくある質問
有給は年度末(3月末)にリセットされますか?
暦の年度末で一律にリセットされることはありません。基準になるのは自分の基準日であり、そこから2年で時効消滅します。会社が「年度末で消える」と説明していても、繰越分が残っている可能性があるため、残日数欄で確認してください。
使わなかった有給はすべて消えてしまいますか?
すべてではありません。付与から2年以内であれば翌年へ繰り越せます。消えるのは、付与から2年が経過した最も古い分だけです。毎年少しずつ使っていれば、古い分から順に失効を避けられます。
有給の時効が2年である根拠は何ですか?
労働基準法115条が、この法律による請求権の時効を2年と定めており、年次有給休暇の請求権もこれに含まれるためです。賃金の一部は当分の間3年に延長されていますが、有給の時効は2年のままです。
有給は最大で何日まで貯められますか?
繰越を含めて保有できるのは実質2年分です。付与日数が上限の20日に達する勤続年数では、前年分の20日と当年分の20日で最大40日になります。それ以上は古い分が時効で失効するため積み上がりません。
退職時に残った有給はどうなりますか?
退職日までに消化するか、消化しきれない分を会社が任意で買い取るかのいずれかです。買取は義務ではなく会社の判断によります。退職前に消化する場合は、時季指定権にもとづき退職日までの日程に有給を充てるのが一般的です。
転職したら前の会社の有給は引き継げますか?
引き継げません。年次有給休暇はその会社での勤続にもとづく権利のため、退職時に消化または買取で清算し、新しい勤務先では改めて入社6か月後の基準日から付与が始まります。
参考・出典
- 労働基準法39条(年次有給休暇・時季指定権)e-Gov法令検索 https://www.e-gov.go.jp/
- 労働基準法115条(請求権の時効)e-Gov法令検索 https://www.e-gov.go.jp/
- 退職代行おすすめ8社比較(各社の料金・運営主体・交渉範囲を公式サイトで確認)https://taishoku-daiko-hikaku.com/resignation-service-comparison/

